定年年齢引き上げ後も、意欲を持って働き続けられるように
全国の国家公務員を対象に、人生100年時代のキャリアを考える講演を企画・開催
(公開日:2026年3月11日)
少子高齢化が進む中で、人手不足の解消や企業の競争力の維持・向上のためには、ミドル・シニア世代の活躍が以前にも増して重要になっています。
定年年齢の段階的な引き上げなど、環境や期待値が変化する中でモチベーションを維持しながら前向きに業務に取り組むためには、ミドル・シニア世代が、定年後までを見据えたキャリアを自ら考えられるように意識を変革する必要があります。
全国の国家公務員の人事制度や制作の企画・立案を担う内閣官房内閣人事局では、高齢政策推進の一環として、国家公務員を対象とした「人生100年時代のキャリア」をテーマとした講演を2024(令和6)年度より企画、運営。2025(令和7)年度は、トレノケートの講師にご依頼いただきました。
お客様概要
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今回お話をお伺いした方
内閣官房内閣人事局
参事官補佐(高齢政策推進担当)
佐藤 美恵子 様
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この事例のポイント
導入前の課題・背景
- 国家公務員の段階的な定年年齢引き上げに伴い、60歳以降の働くモチベーション維持のための働きかけを行いたい
- 元々行っていた対面のワークショップだけでは、開催回数や参加人数の制限もあり、浸透が進まなかった
- 参加のハードルを下げるため、「職員が誰でも自由に参加できる、Web形式の講演」を企画した
導入後の成果
- 合計5,000名以上が視聴し、多くの国家公務員に気づきを提供できた
- アンケート結果によると、「小さくても何か行動に移す」という動機づけの目標も達成した
- 波及効果として、講演をきっかけに、他の省庁で独自の取り組みが発生した
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導入前の課題と講演の目的
初めに、貴局の業務や担う役割について教えてください。
佐藤 様
内閣人事局は、「国家公務員の人事管理に関する戦略的中枢機能を担う組織」と位置づけられ、すべての国家公務員の方々が、それぞれが持てる力を最大限に発揮し、活躍していただくための環境を実現するための各種人事制度や政策を企画・立案する役割を担っています。
具体的には、人材の確保・育成、女性活躍とワークライフバランス推進のための働きやすい環境の整備を目的とした業務の効率化・デジタル化、マネジメント改革の推進など、国家公務員に関して多岐にわたる業務を担当しています。
私の担当する高齢政策推進担当は、高齢の国家公務員の人事行政に関する施策の推進を所掌しています。国家公務員は60歳以降は給与が7割となったり、管理職だった場合は原則としてその役職を外れる制度である役職定年があったりと、環境が変化します。そうした中でも、これまで同様に意欲を持って働き続けていただけるよう、まもなく60歳を迎える職員を支援するための各府省等への情報提供が主な業務になります。
この度の講演を企画された背景には、どのような課題や目的があったのでしょうか。
佐藤 様
高齢政策推進担当として、国家公務員の定年年齢引上げ(※1)に伴い、60歳以降も意欲を持って働き続けていただくための施策を行っています。その1つとして、貢献意欲向上のためのワークショップを各府省等の人事担当者とまもなく60歳を迎える職員を対象として継続的に開催しています。ただ、このワークショップは、各回の上限人数が、このような参加型のワークショップとしては一般的な24人であり、月に一回程度の開催であることから、年間の参加可能な人数に制限があるため、60歳を迎える職員への支援がなかなか浸透しないことが悩みでした。
一方で、60歳を超えた方から、役職定年によりモチベーションが下がるという話をよく聞きます。もしかすると50代までは、不安が顕在化していないだけで、「実は心配だけど誰にも相談できない」と1人で悩んでいる方も多いのではないかと、私が内閣人事局に異動してきた当初から思っていました。
私の業務目標として「新しい取組を考える」というミッションが与えられたこともあり、「多くの高齢の国家公務員に気づきの場を提供すること」を思いつきました。その「気づきの場」の提供方法の1つが、「職員が誰でも自由に参加できる、Webによる講演」でした。その講師としては、学術的な話よりも、現場に即した、参加する方にとって身近で自分ごとに感じやすいお話をしていただける方にお願いしたいと考えていました。
※1 令和5年4月に、国家公務員法等の一部を改正する法律(令和3年法律61号)が施行されました。これにより、原則60歳とされていた定年年齢が2年に1歳ずつ段階的に引き上げられ、令和13年度に65歳となります。(参考: 国家公務員の定年の引上げ(概要))
出典:「国家公務員の60歳以降の働き方について(概要)」(内閣官房内閣人事局 2025年4月)▲
佐藤 様
「誰でも気軽に参加できる形式」である点です。
意欲を持って働き続けていただくためには、定年を迎える前の時点で、キャリアや働き方について「今までと同じように 考えていてはいけない」「60歳になる前から自分で考えた方がよい」という気づきを得て、自律的にキャリアを考えるよう、意識を変えていただかなければなりません。先ほどお話した対面のワークショップに参加する方は、参加の意思がある時点ですでに意識を変えようとしているということですが、大多数の方はそうではありません。より多くの方に、意識を変え、小さくても行動に移すという変化を起こすためには、参加のハードルを下げ、間口を広げる必要がありました。
このような誰でも参加可能な形式はあまり前例のない企画でしたが、上司の後押しもあり、令和6年9月に「60歳を控えた職員を対象とした講演」の第1回を開催することができました。トレノケートさんに依頼したのは令和7年度の第2回の講演となります。
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依頼先選定のポイント
講演の依頼先として、どのような条件でご検討なさったのですか。
佐藤 様
まず、私自身が年齢的にも施策の対象年齢である「高齢の国家公務員」に相当するため、自分が「この人の話だったら聞きたい!」と思える講師であれば、同世代の職員も興味を持ってくれるのではないかと仮定しました。初回となる令和6年度の開催では、その基準で依頼した講師の方のお力や参加のしやすさが功を奏し、当時の内閣人事局の開催する講演の歴代最多受講者数を記録しました。そのため、今回も同様の条件としました。
それに加え、客観的な情報と、実際に自分でお話を聞いてみた所感、それから局内での評判も重視しました。
まず聴きたい話のテーマでWebを検索しました。今回は「高齢」「シニア」「モチベーション」などのキーワードですね。そこで見つけた方の中から、会社の信頼性やこれまでの実績などを確認しました。その後Voicy(※2)の視聴や田中さんがお話されるトレノケートの無料セミナーへの参加を通して、田中さんの話し方や雰囲気を把握しました。無料セミナーへの参加は、講師の方と直接の接点を持つことが出来た点も良かったです。
この時点で自分の中ではほぼ決めていたのですが、局内で提案する前に周囲に意見を聞いたところ、「人材育成界隈で有名な人だ」と同僚が評価していたり、局内にVoicyのリスナーもいたりなど、自分の主観だけではなく他者からも評価されている方だと確信がもてました。
※2 音声による情報発信を行うプラットフォーム。トレノケートは公式チャンネルとして 田中淳子の「人材育成」応援ラジオを開設し、人材育成や組織開発、学び、キャリアをテーマに配信している。
トレノケートの講師にご依頼をいただいたきっかけや決め手について教えてください。
佐藤 様
定年年齢引上げ後も前向きに働き続けていただきたい、という点が講演の最大の目的です。そうしたお話をしていただけそうな方を探す中で、田中さんが寄稿されていたWeb上の連載の『愛されシニアを目指すスキルアップ道場』(NIKKEI BizGate)に出会いました。紹介されている事例はどれも思い当たる節があり、また非常にユーモアのある面白い記事でしたので、この方であれば講演でも良いお話をしていただけるのではないか、と感じたことが最初のきっかけです。
その後はVoicyの「人材育成」応援ラジオや無料セミナーで実際のお話しぶりを聴かせていただきました。「話し方にメリハリがあって聞きやすい」、「聞き手の耳にちょうどいい声のトーン」、「なぜか元気と勇気が湧いてくる」と感じ、ぜひ依頼したい、と考えました。
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講演の準備と運営上の工夫
講演の開催に向けたご準備の中でご不安や苦労された点についてお聞かせください。
佐藤 様
当方からの依頼が、「まもなく60歳を迎える国家公務員に対して、給与の7割措置や非管理職への降任後もモチベーションを下げることなく働き続けてもらえるような、元気の出そうなお話をしていただきたい」という漠然としたオーダーだったにも関わらず、引き受けていただけて有難かったです。
事前にお話しぶりを確認できていましたので、講師の方に対する不安は特にありませんでしたが、どちらかというと、講演の開催案内を作成する際、講師の魅力を上手く伝えられるかという不安の方が大きかったと記憶しています。前回以上の参加者数を目標としていたため、各省の窓口に案内メールを送ったほか、会議や前述の対面ワークショップでも案内を行うなど、事前の周知はかなりしっかり行いました。
また、大規模な開催となる上に、対象者の中にはオンライン配信への参加に慣れていない方も含まれるため、事前に接続テストを4回開催することで操作に慣れていただいたり、参加にあたってのFAQ・トラブルシューティングを作成して共有したりなど、当日スムーズに進行するための準備が大変だった点の一つです。
トレノケートさんにも事前に会場の下見と配信の段取りを確認していただき、追加で必要な機材など持ち込んでいただくなど、ご協力いただきました。
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サービス導入後の効果と参加者の変化
佐藤 様
当日リアルタイムでの参加は、3,500人以上でした。昨年度の記録更新がミッションの1つだったのですが、無事クリアすることができました。その後、国家公務員限定でアーカイブ動画を公開していますので、その再生回数も合わせると2025年12月時点で5,000名ほどの視聴となりました。
参加者の年代としては50代以上の方が96.2%とほとんどを占めますが、30歳未満の参加もあり、若い方でもキャリアについて関心があることが伺えました。
想定していた対象者の方に多くご参加いただけていたのですね。
講演後、どのようなお声が多かったでしょうか?
佐藤 様
講演の受講者のアンケートの結果からは、60歳以降の働き方に不安を持ち、参考となる情報を求めている人が多かったことや、その方たちに有益な情報が提供でき、前向きな気持ちになってもらえたことが見て取れます。
受講者アンケート集計結果▲
また、全体の37.0%から「60歳以降も意欲を持って働くために、何か行動しようと思った」と回答があり、本講演で目指していた、「気づきを得て、小さくても何か行動に移す」という動機づけは、十分に達成できたと思います。特に講演の中で田中さんがお話された、定年前の集大成としての「卒業制作」や、業務外も含めて自身がどのような人でありたいかを表す「二枚目の名刺」について、「テーマを考える時間のある【今】聴くことが出来て良かった」、「想像したらワクワクしました」などの感想が寄せられています。
ちなみに、フリー記入の感想として最も多かったのが、「講師のお話(声)が聴きやすかった」「お話が面白かったので、もっと長い時間でも良かった」など、講師の田中さんへの賛辞です。その中に、「田中さんの講演を企画した皆さま、ありがとうございました」、「講師のセレクト、良かったです」との書き込みもあり、事務局冥利に尽きる想いです。
聴講いただいた方に少しでも変化を促せたとのこと、弊社としても大変嬉しく存じます。
佐藤様や、関係者の皆さまにとってはいかがでしたでしょうか。
率直な感想をお聞かせください。
佐藤 様
まずは、本当に多くの職員に気づきの機会の提供が出来て良かったなと思っています。2025年12月末時点で、講演当日とオンデマンド配信を合わせて延べ5,000人以上の方に視聴いただいており、公開期限である2026年3月31日までに更に視聴者数が増えることが予想されます。
私個人としては、自分が「カッコいいシニア」を目指していることに、改めて気づきましたので、「ご機嫌でいよう」「他人(ひと)の話を聴こう」と自分自身の学びにもなりました。
内閣人事局としては、様々な年代の人材育成等に関する新たな有識者である田中淳子さんおよびトレノケートさんと接点を持てたことは、大きな収穫であると思います。
また、この講演をきっかけに、他の省庁でも、キャリアのオンラインワークショップの実施をトレノケートさんに依頼していると聞いています。農林水産省では今回の講演を事前学習の教材として、実際に「卒業制作」のテーマ出しをしたり、「二枚目の名刺」の構想を練ったりなどのワークを行うとのことで、こうした広がりが起こっていることは大変嬉しいことです。実際に国家公務員全体へ浸透させていくためには、やはり各省庁それぞれでの取り組みが必要です。人事局で情報提供を行い、それをもとに各省庁の人事・管理職が施策を動かす形が理想の姿ですので、今回はその実績にもなりました。
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今後の展望
貴局にて、今後さらに解決していきたい課題や、発展させたい取り組みには、
どのようなものがございますか?
佐藤 様
講演のテーマにしていただきましたが、40代、50代以降の国家公務員は、「これまで自分のキャリアを考えたことがない」、「MustとCanはあるがWillが何か分からない」という方が多いのが現状です。高齢の国家公務員が、自分で自分のキャリアを考え、もっと気軽に上司や人事担当者に伝えられるようになり、上司や人事担当者がそれを受け止めるための支援となるような情報を提供できればと思っています。
民間企業でも雇用期間が延びつつあります。
定年年齢の引き上げなどシニア層の方へ様々な取組みを検討、提供なさっている皆様に、民間企業での取り組みにヒントとなるようなアドバイスやメッセージがあれば頂戴できますか?
佐藤 様
2025年12月に実施されたトレノケートさんの無料セミナー(※3)に当方の企画官の菊地が登壇した際に、「愛が重要である」と申しておりました。これは、国家公務員のなり手の減少や、離職してしまう若手職員に目が行きがちですが、高齢の職員にも、若手職員と同様に愛情を持って、活躍できるよう支援していきましょうという意味でした。
内閣人事局は、多様な価値観の人材が、年齢や性別、経歴に関係なく、最大限の力を発揮して活躍できる状態を目指しています。こうしたマインドを持って取り組みを進めることは、民間企業でも変わりはなくシニア世代の方の活躍推進に良い影響を与えるのではないでしょうか。
※3 2025年12月5日 開催の「ミドル/シニア世代のキャリア開発を考える~内閣人事局のお取り組み例~」。
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講師からのメッセージ
この度は、講演「人生100年時代、自分らしくあるためのキャリアづくりの考え方 ~自分の可能性を信じて変化し続けよう~」をご依頼いただき、ありがとうございました。
私自身が60代で、定年再雇用の契約社員として65歳まで働き続ける中でご依頼いただいた「まもなく60歳を迎える国家公務員の方向けのキャリアの講演」というテーマは、まさに「自分事(じぶんごと)」でした。
そこで、「62歳になった私が59歳の時に聴きたかったこと」や「現時点で取り組みたいと思っていること」を何日も考え続けた結果、「卒業制作のテーマを考えよう」と「二枚目の名刺を構想しよう」の大きな2つの提案を中心に据えました。現在の環境の解説はもちろん必要ですが、そのうえで「今日からできそうな何か」を持ち帰っていただくためです。さらに、数千人規模のオンライン開催であっても思考が多少なりとも刺激されることして、「それなら自分もできそうだ」と自己効力感が増すことがポイントとなると考えました。
そして、60歳前後というキャリアの大きな節目を「組織からの卒業」と捉え、卒業前と卒業後の2つの準備を行うヒントが提供できればよいのではないかと思い至り、これらの提案をいたしました。
講演中にいただいた多くのチャットには、「それならできそう」とか「不安が少し解消した」や「講師が同年代でよかった」という声もあり、「自分事」でお伝えした内容が多くの方に届いたことに安堵しました。中には介護などの課題を抱える声もありました。
私自身も介護経験者でもあるため、人生100年時代のシニア層のキャリア開発においては、そうした介護など家族のケアなどの状況も合わせて自分の人生やキャリアの充実を考えることが大事なのだと改めて実感しました。国家公務員の方と同様私自身も「卒業制作」と「二枚目の名刺」を現在構想中です。50~60代がモチベーション高く働くことは、次の世代にとっての希望になります。
同年代の働く皆さまとともに、現在の組織で最後までイキイキわくわくと過ごせるよう、これからも情報発信、研修コンテンツの開発に邁進していきます。
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トレノケートのキャリア開発支援サービスについて
「人生100年時代」の到来により、労働者の職業人生の長期化など、労働者を取り巻く環境が大きく変化していくことが予想されています。企業においては人材育成を支援するとともに、労働者自身が主体的なキャリア形成を行うことが求められています。
トレノケートでは研修を通じたキャリア開発や学びの支援を行っています。組織のニーズに合わせて、全社員向け、管理職向け、各年代向けなど内容をアレンジすることも可能です。お気軽にご相談ください。
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